クリスタ移行へ思うこと

コミスタ販売終了のアナウンス以降、Twitterでも様々な意見・議論が飛び交っています。

自分も時々それらに混じって発言していました。
そこで交わされる内容の多数を占めているのが「コミスタからクリスタへの移行」に関する話題です。

既に完全移行した人の話…
カラーだけ移行した人の話…
半々位の移行で併用している人の話…
移行しようと試みているもののなかなかうまく行っていない人の話…
現時点での移行を諦めている人の話…

……などなど、いろいろな立場、いろいろな思いの人たちの意見が交わされていて、なかなか考えさせられたり、勉強になったりという状態です。
セルシスのお世話になっている方にメールを出した所、社内でも移行に関して非常に重要な問題と捉えいらっしゃるとのことでした。

そこで、自分がTwitterで提案したのは…

ってことです。

ハッシュタグを付けてつぶやくものは、セルシスの中の人も読んでくださると思いますが、普通のツイートではおそらく拾ってくれないでしょう。
直接要望を上げる場が用意されている上に、ただの一方通行ではなく、ちゃんとレスポンスもあるので、忌憚のない意見を伝える場として大いに活用すべきです。

さてこの「移行」の問題…

クリスタが販売されてからかなり時間が経過していますし、コミスタからクリスタへの移行期間は十分に用意されていました。しかし実際は思ったよりも移行していないユーザーが多いのも事実です。

では、なぜ移行していないのか?

流れている情報を見る限りでは、重大な原因を数点ピックアップすることは出来そうです。
しかし、実際はかなり多種多様な意見が見受けられていて、どれほどコミスタが高機能だったかが伺えます。 様々な意見がありますが、端的に言えば、

      • 「コミスタで出来たことが、クリスタでは出来ない」
    • 「コミスタで出来たことが、クリスタでは手順が変わっている」

  だいたいこの二点の様です。

「コミスタで出来たことが、クリスタでは出来ない」という点について…。

一部搭載されていない機能があることは先日も書きましたが、殆どの機能は「代替」の方法が用意されています。
しかしその「代替」がない機能はどうしようもありません。
それがないと作業に大幅な支障が出るという立場の人にとっては、それを使わない新しい手順を構築するか、あるいはそれが搭載されるのを待つ、という選択肢になります。

「コミスタで出来たことが、クリスタでは手順が変わっている」という点についてはどうでしょう。

実は、これが思ったよりもかなり難しい問題の様に感じています。
「代替」の方法があるなら、その方法を使えばいい、という意見もあるでしょう。
それは確かに間違いではありません。その「代替への変更」が比較的小さくて、直ぐに置き換えられるのなら問題はありません。
しかしこの「代替」の方法・手順がかなり大きな変更点となってしまう人にとっては、大きな障害になります。

私は、一つの「結果」に至るための手段が複数ある場合、そのどのルートを使うかは、その人の使い方次第だし、場合によってはその使い方がその人の感性や感覚に極めて近い部分の場合、それはそう簡単に「変更」することが出来ないと考えます。

コミスタからクリスタの移行は、例えて見るならば……

「部屋」
「机」
「椅子」
「作業台・トレス台」
「筆箱・ペン立て」
「鉛筆・シャーペン」
「消しゴム・ネリケシ」
「ペン軸・ペン先」
「烏口・ロットリング・ステッドラー・ミリペン」
「定規・三角定規・自由定規・雲形定規」
「トーンナイフ・カッター・トーンヘラ」
「羽箒・製図用ブラシ」
「原稿用紙」
「ネーム用紙・ノート」
「トーン・トーン棚」
……などなど…

これらの漫画を描くための環境や道具が、全部新しいものに一度に変わるようなものだと思うんです。
この仕事環境の変更時に、以前のものとほぼ同じツールが継承されていたら、比較的戸惑いも少ないまま新しい環境で漫画を描くことが出来ます。
しかし、中には「自分はこのトーンナイフとカッターがどうしても使い慣れない」とか「この椅子自分に合って無くて落ち着かない」という不満が出てくる可能性だって有り得ます。
その不満の部分は、おそらくその人の「こだわり」だったり「感性」だったり「直感」だったりするんだと思います。それはまさにその人の「個性」であって、マンガやイラストでは一番重要な部分とも言えます。

マンガやイラストを創作するということは、その人の「感性」や「直感」や「こだわり」の部分に直結しています。それが具現化するのが「作品作り」で「個性」が出る部分だと思っています。全く同じ道具を使っても十人十色で使い方が違うし出来上がる作品も違うわけですから…。

だからこそ、人によっては「コミスタで出来たことが、クリスタでは手順が変わっている」事が、その「感性」や「直感」を発揮する上で重要な根幹に影響を及ぼしている場合は、「移行」はそんなに簡単ではありません。
新しいツールを習得して使いこなすために「学習」して「理解」することは重要です。しかしそうしようとしても、「感性」や「直感」の部分を大きく阻害してしまう要素があると感じた人にとっては、大きなハードルとなってしまいます。

いろいろなタイプの人がいて、色々な使い方があります。
今までとほぼ同じような感覚で描くツールを求めている人にとっては、クリスタではまだそれが出来ないと感じてしまえば、移行は保留するでしょう。
しかし「ほぼ同じような感覚で描く」ことが出来ると感じられれば、移行へ向けて動き出せるはずです。

現時点で、クリスタは確実にプロの使用にも十分耐えられるだけの機能を有しているのは間違いありません。
しかし、まだまだ、発展途上の状態です。
これからもっともっと進化して、多種多様なマンガを描く手順に対応した「マンガ制作ソフトの新いデファクトスタンダード」となって欲しいんです。

コミスタから移行できていない人も、時間があるときに、どうかクリスタを使ってみて下さい。
そして不満点や要望点を大いにセルシスにぶつけてみようではありませんか!

それが自分たちが使う道具を、より優れた使いやすいものに進化させる糧になるんですから!


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