ヤマト運輸が、クロネコメール便を廃止する事を発表しました。
楽天やAmazonの通販でも広く使われているメール便がなぜ廃止することになったのかというと…
「メール便は郵便法で『信書』を送ることが出来ないが、『信書』だと意識せず送ってしまった人が罪に問われるようなことが発生しているから」
…ということです。
ここで問題なのは「信書」という定義です。
総務省の「信書のガイドライン」に「信書」に関する「基本的な考え方」が記載されています。
元々は「手紙」を扱うことが出来るのは郵便局のみで、他の事業者は「手紙」を扱ってはいけないことになっているとのこと。その「手紙」の事を法律上では「信書」と読んでいて、その扱いに関しては、「郵便法及び信書便法」によって規定されているそうです。
- 「信書」
=「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」 - 「特定の受け取り人」
=「差出人がその意思又は事実の通知を受ける者として特に定めた者」 - 「意志を表示し、または事実を通知する文書」
=「差出人の考えや思いを表現し、又は現実に起こりもしくは存在する事柄等の事実を伝えること - 「文書」
=「文字、記号、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物のこと」
そして、その「具体例」として上げられているのが…
信書に該当する文書
- ■書状
- ■請求書の類
- 【類例】納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、◇レセプト(診療報酬明細書等)、◇推薦書、◇注文書、◇年金に関する通知書・申告書、◇確定申告書、◇給与支払報告書
- ■会議招集通知の類
- 【類例】 結婚式等の招待状、業務を報告する文書
- ■許可書の類
- 【類例】 免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書などを含みます。- ■証明書の類
- 【類 例】印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し ◇健康保険証、◇登記簿謄本、◇車検証、◇履歴書、◇給与支払明細書、◇産業廃棄物管理票、◇保険証券、◇振込証明書、◇輸出証明書、◇健康診断結果通知 書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
- ■ダイレクトメール
- 文書自体に受取人が記載されている文書
- 商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書
(「総務省HP・信書のガイドライン」より引用)
これ見ると、大抵のものはダメなんじゃないかと思ってしまいますが、以下のものは「信書に該当しない文書」だそうで、あまりにも曖昧すぎて本当に区別がつきません。
信書に該当しない文書
- ■書籍の類
- 【類例】新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター、◇講習会配布資料、◇作文、◇研究論文、◇卒業論文、◇裁判記録、◇図面、◇設計図書
- ■カタログ
- ■小切手の類
- 【類例】 手形、株券、◇為替証書
- ■プリペイドカードの類
- 【類例】 商品券、図書券、◇プリントアウトした電子チケット
- ■乗車券の類
- 【類例】 航空券、定期券、入場券
- ■クレジットカードの類
- 【類例】 キャッシュカード、ローンカード
- ■会員カードの類
- 【類例】 入会証、ポイントカード、マイレージカード
- ■ダイレクトメール
- 専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの
- 専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの
- ■その他
- ◇説明書の類(市販の食品・医薬品・家庭用又は事業用の機器・ソフトウェアなどの取扱説明書・解説書・仕様書、定款、約款、目論見書)、◇求人票、◇配送伝票、◇名刺、◇パスポート、◇振込用紙、◇出勤簿、◇ナンバープレート
(「総務省HP・信書のガイドライン」より引用)
個人宛のものである「プリントアウトした電子チケット」とか「クレジットカード」「ローンカード」がダメで「請求書」や「許可書」がダメという決定的な区別がすごく曖昧に感じます。
クロネコメール便で納品書類が商品とともに送られることは、通販では当たり前のように行われていますが、これは総務省によると「信書に該当する文書」ということになり、厳密にはダメということになります。
これってどう考えてみても、「クロネコメール便」をターゲットにして「日本郵便」を優遇する為の法律でしか無い様に感じるんですよね。
例えば、「クロネコメール便」に代替のサービスとして候補に上がりそうな「クリックポスト」を調べて見ると、大きな矛盾点が有ることに気付きます。
「クリックポスト」とは、全国一律164円で追跡サービスがある荷物配達サービスです。
荷物の規定が「長辺34センチ・短辺25センチ・厚さ3センチ・1kg以下」という極めてメール便に近い条件になります。ちなみに「クロネコメール便」は「長辺34センチ・三辺合計60センチ・厚さ2センチ・1kg以下」です。
「クリックポスト」も「信書・現金を送ることは出来ません」となっていますが、何故か「内容物に関する簡単なあいさつ状、請求書などの無封の添え状や送り状は同封することができます」と記載されています。
はっきりと「信書」は送れないと記載しているのに、総務省が「信書に該当する」と記載している「請求書」は同封できると書いてあります。
つまり「信書に該当する文書」の「請求書の類」の「類例」として記載されている、「納品書」「領収書」「見積書」などの類も、「無封の添え状」ならばOKだとも判断できます。
それに「内容物に関する簡単なあいさつ状」というのも極めて曖昧です。
内容物に関する文書は簡単な「納品書」ならOKだと認めているようなものだと判断されてもおかしくないのではないでしょうか。
これはどう見ても矛盾しているのではないでしょうか?
クリックポストでこれがOKならば、クロネコメール便で同様のものを送ってもOKということになります。
しかし「郵便法及び信書便法」ではクロネコメール便はアウトと判断されていて、だからこそクロネコヤマトは廃止を決定せざるを得なかったということになります。
「クリックポスト」は高い確率で「クロネコメール便」の市場狙った後発のサービスです。そちらでは一番利用市場として大きい通販業者が懸念する同封物「内容物に関する簡単なあいさつ状や請求書など」はOKで、「クロネコメール便」ではNGということになるならば、今でこそ民間となった日本郵便を優遇し民間業者であるクロネコヤマトに対する圧迫だと思われても致し方なんじゃないかと思ってしまいます。
加えて、日本郵便は通販事業者向けに「クリックポスト」というサービスも展開しています。
こちらは、梱包条件が厚さが3センチまでという点以外は「クロネコメール便」と同様で「クリックポスト」と同様に「内容物に関する簡単なあいさつ状、請求書などの無封の添え状や送り状は同封することができます」と記載されています。
「信書」を扱うことが出来るのは郵便局(現日本郵便)のみというのが今の時代には即していないし、そもそもが曖昧な「信書」の定義を撤廃すべきじゃないかと思います。
クロネコメール便は法人限定で内容物の種類を確認できるカタログ・パンフに限定した「クロネコDM便」というサービスに切り替えるとのことですが、クロネコヤマトのサービス拡充に期待したいと思います。
追記
ヤマト運輸がクロネコメール便が儲からないからやめるっていうのならとっくにやめている。市場規模が大きいから日本郵便がゆうパケットやクリックポストという市場をターゲットとしたサービスを後発で始めた。結果的に郵便法及び信書便法をタテにクロネコメール便を潰す事に成功…という構図に見える。
— ねぐら☆なお/NaoNegura (@neguranao) 2015, 1月 22