「有楽舎工房」の通販業務は、今まで「クロネコヤマト」のメール便を使っていました。
しかし御存知の通り、「郵便法」に於ける「信書」の問題で、3月いっぱいでメール便を廃止して、新規に幾つかのサービスに移行する、ということになりました。
そのメール便に変わるサービスが「クロネコDM便」です。
「有楽舎工房」の通販を行うよりも前ですが、クロネコビジネスメンバーズのサービスを利用する契約をしました。特に料金的にお得になったというわけではないんですが、送り状をWebサービスで作成して印刷することが出来るのがとても便利で、通販のメール便発送にそのまま利用していました。
メール便はトラブルが多いなどと噂されたり、実際に未配達の事故が時々報道されたりしますが、自分は今までメール便によるトラブルに会ったことは一度もありません。運が良かったのかそれともサンプル的に少ないから…。いずれにせよ、安くて便利なサービスなので、愛用していました。
さて、「郵便法」により、「信書」を扱えるのは、事実上日本郵便のみとなっています。一応規制緩和により民間でも一定条件を満たせば「信書」を扱うことが出来ることになっていますが、その条件が異常にハードルが高いために、事実上は日本郵便の独占になっています。
つまり、「信書」は、クロネコヤマトを始め、佐川急便も日通も西濃運輸も扱うことが出来ません。
「信書」ってなんぞやって事がそもそも問題なんですけど、総務省のHPに「信書のガイドライン」が載っています。
信書に該当する文書
- ■書状
- ■請求書の類
- 【類例】納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、◇レセプト(診療報酬明細書等)、◇推薦書、◇注文書、◇年金に関する通知書・申告書、◇確定申告書、◇給与支払報告書
- ■会議招集通知の類
- 【類例】 結婚式等の招待状、業務を報告する文書
- ■許可書の類
- 【類例】 免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書などを含みます。
- ■証明書の類
- 【類例】印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し ◇健康保険証、◇登記簿謄本、◇車検証、◇履歴書、◇給与支払明細書、◇産業廃棄物管理票、◇保険証券、◇振込証明書、◇輸出証明書、◇健康診断結果通知 書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
- ■ダイレクトメール
-
- 文書自体に受取人が記載されている文書
- 商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書
信書に該当しない文書
- ■書籍の類
- 【類例】新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター、◇講習会配布資料、◇作文、◇研究論文、◇卒業論文、◇裁判記録、◇図面、◇設計図書
- ■カタログ
- ■小切手の類
- 【類例】 手形、株券、◇為替証書
- ■プリペイドカードの類
- 【類例】 商品券、図書券、◇プリントアウトした電子チケット
- ■乗車券の類
- 【類例】 航空券、定期券、入場券
- ■クレジットカードの類
- 【類例】 キャッシュカード、ローンカード
- ■会員カードの類
- 【類例】 入会証、ポイントカード、マイレージカード
- ■ダイレクトメール
-
- 専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの
- 専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの
- ■その他
- ◇説明書の類(市販の食品・医薬品・家庭用又は事業用の機器・ソフトウェアなどの取扱説明書・解説書・仕様書、定款、約款、目論見書)、◇求人票、◇配送伝票、◇名刺、◇パスポート、◇振込用紙、◇出勤簿、◇ナンバープレート
あれ?
田舎から上京してきた学生宛に、母親から手紙を同封した食料品が送られてくる…なんて、ごく当たり前の光景がありますが、、これ実は「信書」を同封したことになるので、「郵便法違反」だということ?
更には、「納品書」や「領収証」は「信書」扱いになっています。つまり、日本郵便のサービス以外で「納品書」や「領収証」を同封してはいけないことになっているのです。
あれれ?
今までいろいろなオンラインショップの通販を利用してきたけど、当たり前のように「納品書」「領収証」入っていたよ…?
「宅急便」「宅配便」等だけでなく、日本郵便の「ゆうパック」でさえ、「信書」を送ってはいけないことになってたりするのに、入ってたよ…??
色々と疑問符が浮かんでくるんですが、t実は日本郵便はゆうパックについて「信書を送ることはできませんが、ゆうパックに添付する無封の添え状又は送り状については、送ってもOK」と明言しています。
この「添え状」や「送り状」の範囲がどれくらいなのかもすごく曖昧なんですよね…
同じ法律のもとで同じ条件だとするならば、「無封の添え状または送り状」は、クロネコヤマトのサービスの「宅急便」「メール便」でも送ってもいいことになります。
しかし、ヤマト運輸はメール便の廃止に踏み切りました。
ヤマト運輸は廃止の理由を「利用者が知らないうちに信書を送ってしまい、郵便法違反に問われるリスクがあるため」としています。
現在の郵便法は、日本国憲法が公布された翌年の昭和22年に制定された法律です。
法律の目的は、「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによつて、公共の福祉を増進すること」とされています。これは郵便法1条に記載されています。
これを実現することが出来る十分なインフラを持つ民間企業なら「一般信書便事業」をすることが出来るんですが、この条件がかなりキツイ。最大のネックは、おそらく「全国10万本のポスト設置義務」でしょう。
この「ポストの設置義務」に対して、ヤマト運輸は声明文を発表しています。
- 「ユニバーサルサービスに本当な必要な条件なのか? より緩やかな条件で足りないのか? という検証がない」
- 「ユニバーサルサービスについて は、当社の取扱店は全国に20万店以上ありますから、これらの活用や、同じく全国に散在するコンビニ店の活用により、信書便差出箱を設置せずとも実現可能 です」
いずれも「文書輸送に対する規制問題について 」の原文より
ヤマト運輸がこの曖昧ながらもガチガチの「郵便法」に振り回されているのは、「民業圧迫」の様に感じています。
まさに「メール便」廃止のタイミングを狙ったかのように、日本郵便は新しいサービスを開始する事になりました。そのサービスは「スマートレター」。
メール便の規格とほぼ同じサイズの専用封筒に入れて全国一律180円で送れるサービスで、これは「信書」を送付することが出来ることになっています。
値段も規格もヤマトのメール便市場を完全にターゲットにしたサービスです。
確かにサービスとしては魅力的です。多くのメール便利用者がこちらのサービスに移行することになりそうです。
しかし私は、どうも釈然としません。
「スマートレター」のサービスが発表された時に、感じたこの胸糞悪さと違和感…
「既得権益」を振りかざして、民業を圧迫している「日本郵便」。その日本郵便はこの秋に上場されます。それによって、事実上完全民営化に進んでいる事は明白です。
しかし同じ土俵で他の業者と闘うわけではなく、「既得権益」だけはしっかりと持ったまま…。
この一連の日本郵便とヤマト運輸の動向を見て「企業努力で懸命に市場を切り開いているヤマト運輸を応援したい」という感情が強くなりました。より安くて良いサービスを使いたいという気持ちが強いのも確かですが、それ以上に「可能な限り日本郵便よりもヤマト運輸を優先させたい」と思うようになったのです。
数日前にクロネコビジネスメンバーズの自分宛てに、クロネコDM便のサービスの案内が来ました。
自分の選択は言うまでもなく…(*^^*)デス。